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若林正恭さん。言わずと知れたお笑い芸人オードリーの片割れだ。この本は2016年の夏休みに若林さんがキューバを訪れたときに感じたことを書いたエッセイ集だ。
本人曰く、「僕は人見知りだ」そうです。
そんな人見知りの若林さんが、なぜキューバを訪れたのか、キューバで感じたことはなんだったのか、早速紹介してみましょう。
もしかしたら、この本を読み終わる頃にはキューバへ行きたくなるかも知れません。
ニューヨークで感じた違和感
時は遡り2014年2月。若林さんはスーパーボールの取材のためにニューヨークを訪れていた。
ニューヨークを訪れたのはこの時が初めてだった。タイムズスクエア周辺の広告からは「夢を叶えましょう!」「常にチャレンジしましょう!」「やりがいのある仕事をしましょう!」というメッセージが流れているように感じたというのだ。まさに立ち止まることすら許されない、そんな空気を感じたという。この奇妙な感覚は、太平洋を渡り東京に住む私たちにも届いているのではないかという直感がはたらいたという。
日本でも「やりがいのある仕事をして、手に入れたお金で人生を楽しみましょう!」
「仕事で成功してお金がないと人生を楽しめない」という声に変換されて。
それって本当の幸せなのか。若林さんには違和感だった。
そうだキューバへ行こう
2016年6月。マネージャーより「今年の夏休みは5日取れそうです」と言われた。若林さんは念願であった、キューバに行こうと決心する。
旅行代理店に行って申込をしようとすると、基本ツアーは4泊6日のプランがほとんどで、3泊5日というプランがなかった。なんとか3泊5日のプランに出来ないかと相談したが、飛行機や、ホテルの手配が無理と言われてしまったのだ。
それでも諦めきれない若林さん。ネットで航空券のサイトを観ていたら、ちょうど一席分空いていた。何かに導かれるようにすぐにその一席を確保したのだ。
中南米の国では群を抜いて安全と言われるキューバだが、やっぱり異国の地だ。
若林さんも事前情報をインプットして現地に入ったが、一人旅ということもあり、緊張が続く。
彼は予約しているホテルまでタクシーで向う予定だ。キューバでは日本と違って、順番にタクシーを乗らなくていいらしい。そこで、若林さんは、高齢で体格が華奢な弱そうなドライバーを探したというのだ。
理由は、キューバは銃社会ではないのでタクシー運転手が銃を携帯している確立は低い。ならば何かあった時は体力勝負だということで、自分でも勝てそうな人を選んだという。
これって本能ですよね。勝てない相手に勝負して、命を取られたら終わりですから。日本では絶対に体験できないことを入国直後に体験したのです。
無事にホテルについて一安心。その日は部屋の電気を着けたまま眠りに落ちた。
日本に居ても緊張して眠れないということはありますが、命を取られるかも知れないという緊張を体験することはありませんから、よっぽど緊張していたんですね。私も命取られるぐらいの環境になると、睡眠不足も解消されるのかな。
陽気じゃないキューバ人
翌日から市内を見学する若林さん。
初日は日本語が喋れるキューバ人のコーディネーター“マルチネスさん”と行動を共にする。
若林さんが抱くキューバ人のイメージ。“陽気な人“。ちょっと面倒くさいかもと思ったそうだ。(笑
本人はどちらかというと人見知りで騒ぐタイプではない。なので、相手が陽気だと少々疲れるので嫌なのだとか。しかしマルチネスさんは、若林さんの創造を遥かに超えていたのだとか。
対面後、全く会話が続かない。この人キューバ人なのに陽気じゃない。逆に自分が話さなければと・・・
会話が途切れると切迫する若林さん。しかし本人も人見知りなので、会話が続かなかったそうだ。
若林さんはこの時、キューバ人も人見知りの人は居ることを知ったそうです。(笑
しかし彼と会話が弾んだ瞬間があった。若林さんが日本から持参したキューバのガイドブックを出したときだそうだ。
マルチネスが「見しても貰っていいか。」と訪ねて来た。
間髪いれず「これ間違っています。」
若林さんが「何が間違っている」って聞いたら
「お金逆ね」
なんと、1cue(日本円で約100円)と1centavo(日本円で約1円)が間違っていたのだ。
このあと、若林さんがマルチネスさんに「おれホテルでチップに1 centavo。10枚あげちゃったよ」と言ったら。
ケラケラ笑われ「それは彼らの1ヶ月分(日本円で1000円)の給料に該当する。」と言われたらしい。
このあとチップの額を少なくするのも恰好が悪いと思い、結局毎日チップを10 centavo払ったそうだ。
ホテルの担当からは、お礼の手紙をいただいたそうだ。(大笑
それはそうだ。3日間もチップを貰えば、3ヶ月分ぐらいの給料になっちゃいますからね。
このことをマルチネスさんに報告できなかったことが心残りだったようだ(笑
表参道のセレブ犬とガバーニャ要塞の野良犬
観光場所のガバーニャ要寒では、あちらこちらに野良犬がいることに気づいた。見ていると、観光客に媚をうって餌を貰っているのだ。
その犬が、東京で見る、サングラスとファーで自分をごまかしているようなブスの飼い主に、リードにつながれて、尻尾を振っているような犬よりもかわいく見えたらしい。
犬ですら誰かに飼いならされるよりも自由と貧しさを選んでいたようにみえたのは、そこがキューバだったからなのか、若林さんの幻想なのかは本人もわからない。
隅田川と親父
最終日の夕方、若林さんは市内を散歩していた。この街にも慣れたもので、アイスクリームを買って食べたり、お土産屋さんを覗いたり寛いでいた。最高の散歩だと若林さんは著書で言っている。そんな中、磯の香りとゴミのにおいをブレンドしたような香りを海風が運んで来たのだ。一瞬で子供のころの隅田川のにおいを思い出させてくれたという。
隅田川のにおい。まさに幼少期の思い出だ。そこには本人だけではなく、彼にとってのヒーロー親父さんの存在があった。
若林さんの親父さんはその年(2016年)の4月に亡くなっていた。そんな時期も重なって、親父さんのことを思い出したようである。
母親に「親父最後どこか行きたいって言っていた」って聞いたとき、母親が「キューバに行きたいて言っていたよ」と教えられたそうだ。
もしかしたらその言葉がどこかに残っていたからこそ、この年キューバを訪れたのかも知れない。
まとめ
「物質的な豊かさだが人の幸せなのか」という問いは今でも続いている。これには正解はなく、幸せであると同時に、そうでもないのかも知れない。
若林さんがキューバを訪れて感じたかったことは、まさにこの答え探しでもあった。
ニューヨークで見かけた広告から感じ取った違和感。
じつは神様が決めたものではなく、新資本主義という経済のなかで、人よりもいい生活、人よりもいい物を食べたということ競う。
なんとなく誰かに勝ったという優越感を浸りたいがために、中の上を目指すこの世の中に違和感を感じていたのかも知れない。
それが構築されていない社会こそキューバだったのだ。だから訪れて確認したかったのかも知れない。
過剰な広告もなく、クラブ(深夜)も国営経営するこの街には、犬ですら自由を選択できる仕組みがまだ残っていたのだろう。
TKAgent
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