鴨の脂が、濃い目のそばつゆに流れ出し、甘じょっぱい汁を肴にお酒がすすむ。
この時期はぬる燗という人もいるが、私は冷でいただく。
適度に冷えたお酒の後に、温かい鴨汁を一口すすれば、五臓六腑に沁みわたる。
火の入ったネギは、トロットしていて甘い。
私の流儀としては、団子(つくね)は、いつも最後まで残しておく。
それ以外は、お酒 → 鴨肉 → ネギ → 汁 そしてお酒と、規則性のように食していくのだ。
途中、お酒をお替わりする。
食べ終わることには、心もお腹も満腹だ。
冬に味わえる、いっときの幸せ。私にとっては、それが並木の鴨なのだ。
並木の鴨が終われば春が来る。
今年は春まで何回味わえるだろうか。