特に朝の通勤時間帯は下車駅や乗換駅の関係で、決まった時間の、決まった車両の、決まったドアから乗る人は多いだろう。
いつも電車の中でスマホばっかみていると気がつかないが、ちょっと顔をあげて人の動きをみているとスマホ以上に面白いことに遭遇する。
さっそく紹介しよう
今回の登場人物は
Aさん・・・サラリーマン
Bさん・・・OL
あの人・・・おじさん
乗車区間は
X駅・・・AさんとBさんが乗ってくる駅
Y駅・・・X駅のとなり
Z駅・・・Y駅のとなり
車両は
4つドア10両編成
進行方向2両目が本日の舞台である。
ガタンゴトン。ガタンゴトン。
この一定のリズム感がスイマを誘発するのか、前の日の夜更かしがスイマを誘発するのか
とにかく朝の電車は気持ち良いぐらいに眠れる。
そんな中
車掌のアナウンスがあるとそろそろX駅の到着だ。
電車は運転手のなだらかなブレーキ操作で寸分の狂いもなく駅に到着する。並んでいる乗客の目の前にドアーが飛び込んでくる瞬間だ。
車掌がドアーの開閉ボタンをおすと、プシュう~ と音をたてながら一斉に扉が開き、雪崩のように人が降りていく。
そんなに競わなくてもといつも思うが・・・
この波に乗り遅れると後ろの人から押されてしまう。
乗客が降りると今度は一斉に乗車してくる。
朝の怖い光景だ。
今日の主役は二人。
ズドンズドンという低い音のAさんとハイヒールのコンコンという高い音のBさん。
この二人、実は”あの人”の前のポジションを奪うために、電車に乗ると普通の人より早足で入ってくるのだ。
なぜかこちらは競っているように。
車中はギュギュ詰めでのピーク時間ではないが、それでも都心に向かう電車で座るのは難しい。
でも”あの人”は、X駅の次のY駅で絶対に降りる人。この二人はそれをわかっているのだ。
Y駅以降は、乗車する人は多いが下車する人は少なくなる。ある意味、あの人の席はこの電車で座れる最後の指定席券なのだ。
”あの人”はいつも4つドアーの2番目と3番目の間の7人掛けのイスに座っている。
端席の場合もあるがそれはその日にならないと分からない。2番目の扉に近いこともあれば3番目の扉に近いこともある。
X駅につくと4つドアの
2番目の位置からはサラリーマンのAさんが、3番目の位置からOLのBさんが乗り込んでくる。
小走りに”あの人”の前まで来てどっちが両足を地につけ、目の前の手すりを握るのかでその日の勝負が決まる。
何となく見ているとお互い意識をしているのがわかるのだ。
負けた方は隣に立つわけでもなく、背を向けて反対側に立つのである。
ただ、どっちが勝ってもY駅で座れないことがあるのだ。
それは”あの人”がY駅で目覚めないのだ。
もちろん、AさんもBさんもその日、目の前のポジションをとったからと言って
起こすことはしない。
”あの人”は、寝過ごしてZ駅まで行ってしまうのである。
”あの人”が起きてみた、Y駅とZ駅の車窓は朝の怖い光景に変わる。
皆さんもそんな”あの人”の顔を想像できるだろう。