下町ロケットを説明する必要はないだろう。
佃社長率いる、佃製作所の面々が繰り出す物語だ。
物語のキーワードは
・中小企業VS大企業
・後継者問題(中小企業の事業継承)
・特許技術の紛争
・商品開発
・資金ショート
・ベンチャー企業
など
いま中小企業が抱えている経営課題とリンクするキーワードが散りばめられている。
第一段は、ロケットエンジンのバルブシステムの開発。
第二段は、心臓手術に使用する人工弁の開発をテーマに話が進んだ。
そして今回は、トランスミッションのバルブ開発がテーマで話が進んで行く。
フィールドは、宇宙→医療→大地 と変わるが、作り続けているのはバルブ。
この後の読書感想文
多少ネタバレ感もありますので、まだ読んでいない方。
これから読む予定のある方はしばしこの辺でお別れ致しましょう。
ネタバレしてもいいと思う人は引き続き↓の方にお進みいただきお読みください。
それではどうぞ
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主な登場人物
佃(佃製作所 社長)
殿村(佃製作所 経理部長)
財前(帝国重工)
伊丹(ギアゴースト 社長)
島津(ギアゴースト 副社長)
物語
佃は財前から衝撃の事実を突きつけられる。
帝国重工の社長交代という既定路線が社内で引かれているということ。
そして後継者候補は、反社長派であるということ。
反社長派になるということは、大きな経営方針の転換を意味していることになる。
現社長の肝いりでスタートしたロケット開発は間違いなく暗礁に乗り上げる。
財前は事前に、佃に報告したかったのだ。
折しも佃製作所は、違う主要取引先から、主力商品の小型エンジンの受注減を突きつけられた。
こちらも理由は社長が交代し、経営方針が変わったからだという。
順調に見えた佃製作所も、一転してピンチに立たされていた。
そんなある日、経理部長の殿村の父親が倒れたと会社に連絡が入る。
倒れた時期が収穫とも重なり、殿村が父親に変わりにコメの収穫をすることに。
佃は殿村の父親の見舞いを兼ねて殿村の元に向かった先で、新商品のヒントを得る。
それがトランスミッションだった。
しかしトランスミッションの開発ノウハウなど佃製作所にはない。
新たに人員を募集する余裕もない。だったら出来ることからやろう。
結果、トランスミッションの中にあるバルブ(部品)の開発から取り掛かることを決めた。
受注減をいい渡された会社は、小型エンジン以外にもトランスミッションも外注している。
担当者に新しいトランスミッション開発したら検討いただけるかと聞いたら、新型機からであれば十分佃製を検討のテーブルに上げることは出来るといわれた。
しかしここで新たな問題が発生した。
先方はトランスミッションが欲しいのであって、バルブだけが欲しいわけではない。
佃製作所がまず営業先として選ぶのは、トランスミッションを作っている会社で、バルブを外注している会社ということになる。
思い切って今トランスミッションを購入している外注先を担当者に聞いたところ、素直に教えてくれた。
ギアゴーストという会社だった。
ギアコストは、設計を自社で行い、部品の調達は全て外部に任せるという、いわゆるハブレス工場方式を取っている。本社は偶然にも佃製作所と同じ大田区にあった。
ハブレスなら、バルブのみの供給は十分考えられた。
佃製作所にも、少し光が差し込んできたようだ。
取引先からの口添えもあり、ギアゴーストとの面会は時間を要さなかった。
ギアゴーストは、ビジネスプラン(経営方針・営業)を社長の伊丹が考え、商品(技術)は副社長の島津が考えるという役割分担で成長してきた。
両名とも元々は帝国重工の出身者で、思うところがあり、起業した。
彼らの考えはシンプルだ。
自分たちが要求する性能、見合うコスト、納期であればどこでも受け入れる。
ただし全てコンペ方式で行い調達先を決めるというのだ。
しかしそのハードルは決して低くはない。
現在はバルブ大手のメーカーから部品を調達していることがわかった。
目下、佃製作所はこの大手メーカーに勝たなければならないのだ。
来る日も来る日も開発に明け暮れる毎日。
そしていよいよ完成。
「やったー」と喜んだ瞬間、あらたな試練が・・・
製品原価(コスト)が予定していたよりも高いのだ。
性能は相手の要求以上。しかし製品原価は高い。
佃に残された選択は二つ。
納入価格を上げる交渉をし、当初予定していた佃の利益額を確保するか。
納入価格をそのままにし、佃の利益を削り納入するか。
しかしその前に大手バルブメーカーに勝つ必要がある。
さてどのような決断をしたのかは、ぜひ本で確認してほしいが、無事に大手のバルブメーカーとのコンペに勝つことができたことは書いておこう。
ここで終わったは池井戸作品ではない。
そうここから真の問題が発生した・・・
まさか。まさかの特許侵害・・・
しかし今回訴えられたのは、佃製作所ではなく、ギアゴースト。
ある日突然大手トランスミッションメーカーから訴えられてしまう。
賠償額なんと15億円。
ギアゴーストの伊丹社長は、顧問弁護士と相談、対応を協議するが、支払う以外に道は残されていないようだ。
途方にくれる伊丹社長。
銀行に支援をお願いするが、ここでハブレス工場の弱点が出てしまう。
そう資産(工場や機械)がないのだ。
取引先にもお願いするが、15億も貸してくれる会社など簡単にみつからない。
最後かと訪れた会社で、あるアドバイスをうける。
「うちは駄目だが。佃さんに聞いてみたら。あそこも昔特許侵害で訴えられたことあって、勝ったんだよね・・・」
そうそれを教えてくれたのは、奇しくも佃にギアゴーストを紹介した人だった。
さぁこの後ギアゴーストどうなっちゃいますかね。
まぁ最後はご想像どおりです(笑
だってそれが池井戸作品ですから。
そして今回の物語の裏キーワードは“別れ”のような気がしています。
この別れが秋発売の第4段へ伏線になってくるのか楽しみです。
第一弾、第二段を読んでいない人も、十分楽しめる作品になっています。
週末のお供にどうでしょうか。