著者の中村さんは、サン・アド、電通でコピーライターをされ、いまはフリーで活動されている。近年では後輩の育成や各審査の委員なども努められている方だ。
中村さんは著書で、いいコピーを書いているライターは、いいコピーを選べるライターだと言っている。
コピーを書くというのは、言葉を出し、選び、また出し、選ぶという作業の繰り返しなのだ。つまり最も伝わる言葉を選び抜くことが、コピーライターとして重要だと言っている。
ただ何気なく伝えるよりも、言葉を選んだほうが、相手に伝わりやすく、印象に残るように伝えることができる方法なのだと著書を通じて学びました。
わたしはコピーライターではないが、営業で販促資料を作ったり、ブログを書いたりしています。これは誰かに何かを伝えるという作業なのでとても勉強になりました。
著書では、中村さんが考える、言葉の選び方の方法が紹介されています。
コピーライターでない方も、ぜひ参考になる著書なので早速ご紹介したいと思います。
友だちの言葉より圧倒的に信憑性が低いのが広告コピー
驚きました。広告コピーって信憑性低いですって。確かにそうか。メッセージを受け取る消費者は、どうせ良いことしか言わないだろって思ってますからね。そんなマイナス状態から、どうやってメッセージを届けるのか、これがコピーライターのお仕事なのです。
著書のなかで、新商品のときのキリンビール一番搾りのコピーが紹介されていました。
キリンビールは、一番搾り麦汁だけでつくったビールなので、おいしいですよとPRしたいわけです。でもこれをダイレクトにPRすると、消費者はそれって企業さんが言っているだけでしょう、別にいつものビールでもイイやってことになります。つまり新商品を手にとってもらえないわけです。これって新商品では相当致命傷ですよね。
そこでCMでは、企業側は「一番搾り麦汁だけでつくったのでうまいことはわかっていました」というメッセージをストレートに出します。それを消費者代表として俳優の緒形拳さんが「ま、飲んでから、決める」というセリフで切り返すのです。
つまり緒形拳さんがお客様の代表なんですね。でもここで「うまい」って言ってもまだ新商品で認知度も低い。いくら人気俳優が「うまい」っていっても、その言葉の信憑性が問われちゃうわけです。
だからあえて、「ま、飲んでから、決める」というメッセージを消費者にだすのです。そうすると消費者は「おれも、じゃ、飲んで決めてやろうと」という気になり、それが購買意欲に続くのです。そうやって企業のメッセージをしっかりと届ける。言葉ってすごいですね。
本物への近道。それは本物を知ること。
中村さんは、コピーをつくるとき、自分で仮説検証していくことが重要だと言っている。これを繰り返すと試行錯誤の中から、これは良いという判断基準が自分の中に確立していくのだという。
無作為に選ぶのではなく、何か確たる判断基準を自分の中につくることが、言葉を選ぶという作業には必要なのだ。
著書のなかで、ダイヤモンド鑑定士についても触れられていました。
本物のダイヤモンド鑑定士に育てる一番の近道は、本物のダイヤ以外見せないのだ。
そうすると、偽物がわかるようになるそうです。これも本物を見続けることによって、本物の基準を持つことができるからだ。
営業もある程度経験すると、このお客さんん大丈夫だな。このお客さん付き合うとまずいかな。なんって直感当たりますよね。それも知らず知らずのうちに何か基準を得ているのかも知れませんね。
コピーライターはお医者さん
中村さんは著書のなかで、広告主とコピーライターの関係は患者さんとお医者さんのようなものだと言っている。
広告主は知っているのです。
- これをやれば完璧ですという広告はないと知っている。
- マーケティング理論が全て正しいなら商品はみんな売れるが実際には売れない。
- 思入が強いので、勘違いや問題点に気づきにくい。
それが原因で消費者との微妙な差異が発生することもを。
その原因を解決してあげるのがコピーライターの仕事だといっている。
なんとなく痛い(課題)。どこだろう。場所を見つけて治した(解決して)あげる。
中村さんはこんなアプローチが内科医に似ていると言っている。
また、コピーライターは消費者の最前線にいるので、広告主よりもより消費者に近い立場で客観的に判断をすることができる。だから広告主よりもその課題がわかるのだそうだ。
わたしも営業代行するときは、依頼を受ける会社の人にそのサービスや商品の想いを聞くようにしています。あえて、そのサービスや商品の何処が良いんですかと尋ねると、ものすごく熱く語ってくれます。
その部分を大事にしたいんだなという思いと、本当にそれがお客さんが望んでいることなのかと想像してみます。どのようにPRしたあげたらいいかと思いながら営業代行するようにしています。少し溝を埋めてあげるだけで、お客様にしっかり商品の良さが伝わります。
コピーをだすには、言葉を深掘りしていくことが良い
中村さんは著書のなかで、コピーを多く出すのに、「てにをは」を変えたり、語尾を変えたりする方法よりも、言葉を深掘りしていくことがいいと言っている。
例えばタクシーのコピーを考えるときには
どんなときに、タクシーに乗っていたのか
荷物が多いとき
↓
荷物が多いときはどんなときか
↓
旅行のとき
↓
旅行に行くときは
↓
東京駅。羽田空港 など
または
高齢者の場合は
↓
買い物、病院に行くとき など
連想ゲームのように、一つの言葉から、深掘りしていくことで
タクシーを乗車する本質に迫っていくことができるのです。
原寸大で考える
コピーは文字を書くだけではなく、その言葉がどういう場所で、どんな状態で消費者の目に届くのかを考える必要がある。その心づかいが大事なのだ。
コピーは言葉ではあるが、必ず原寸大で考える必要がある。
- テレビで流すのか
- 電車の広告なのか
- WEB広告なのか
- 新聞なのか
一つ例に出ていたのは、新聞は折られて届けられるため、折り目にキャッチコピーを配置しないなど、読み手に対しての心づかいが必要。折り目にコピーがあったら、いいコピーでも逆に見づらいコピーになってしまうのです。
素人目線こそ大事
広告は素人に聞いてもしょうがない。
そんなことはないと中村さんは著書の中で言っている。
なぜなら広告をみるのは、素人だからだ。
素人が、「だって、そうじゃんって」言えるかどうかって、広告では重要なこと。
コピーとは素人に伝える力なのです。
まとめ
- 言葉を選ぶことで、より相手に伝えやすくすることができる
- 本物を観ることで、本物に近づくことができる
- 言葉のかっこよさではなく、本質を見抜くことが大事
- 相手の立場にたって考える
これってコピーライター以外にもビジネスパーソンなら必要な内容です。
相手に何かを伝える仕事に就かれている人にはオススメの一冊です。