2017年就職人気ランキング1位のANA。相変わらず学生に人気の企業だ。
「ANAの口ぐせ」「ANAの気づかい」に続き、KADOKAWAから出版されたANAシリーズの三作目が「ANAの教え方」だ。
この著書は、ANAのベテランスタッフを取材して、伝えられ、伝えてきた「教え方のコツ」をまとめた本だ。
実例を交えながら解説されているので、とってもわかりやすい。
気づけばもう4月。新入社員が入ってくる季節。
部下や後輩の指導に悩まれている方にはオススメの一冊です。
さっそくご紹介しましょう。
「動かす」「引っ張る」では部下・後輩は成長しない。
「サポートする」教え方が最強のチームプレーを生む。
著書でANAの基本的な教え方は、
後輩に指示をだして動かすのではなく、ワンマン経営のように引っ張っていくでもなく、
先輩がサポートに徹することだと言っている。
変化が速く、先が見えにくい世の中では、言われたことを忠実にこなすだけでは、スピードについていけない。
今日の常識は未来では非常識になっているかも知れないのだ。
今後マニュアル通りにやらなきゃいけない仕事はAIやロボットが替わってくれる。
つまり、決められた答えしか持っていない人。言われたことしか出来ない人は、必要なくなっていくのだ。
そういった人材にしないためにも
- 1教えたら、完璧に1できる人ではなく
- 1教えたら、10考えられる人
- 1教えたら、10考えて、自ら100の成果を生み出せる人
出典:人もチームもすぐ動くANAの教え方
つまり今後は自ら考えて行動する人を育てることが重要なのだ。
サポートに徹する一番の方法。答えを教えず「質問」をすること
ANAではサポートに徹する一番の方法は、部下や後輩に答えを教えず「質問」をすることが、重要だと言っている。
例えば
新規の営業先から帰って来て御礼のメールや手紙をだすのは一般的だろう。
普通なら、「今日は時間を取ってもらったから、担当の人にお礼のメール入れといてね。」と言ってしまう。
ANA流に置き換えれば
「お客様に対してどう対応すれば、次の訪問につながると思う?」と質問するらしい。
メールを出す目的は、みんながやっているからではなく、次の訪問につながるようにするための手段だ。
でもこれを攻略法のように教えてしまっては、成長がありません。
「どうすれば良いという」質問にしてあげることで
担当者は
- メールにするのか
- 手紙を書くのか
- 勢いあまって明日は飛び込みでいくのか
考えるのです。
もう一つの効果としては
「人は誰しもが、心の底から納得していないと、動くことができない」というのだ。
- 指示をされたから
- 何となく上司に怒られるから
で、メールをするのでは、成長できないのです。
次のステップは、少しずつ仕事に慣れてきたら仕事を任せるということが重要。
ただ、任せるのと放任するのとは違うので、勘違いしてはいけないと、言っている。
ANAで任せるということは、責任者が常に近くにいて、行動を確認し、一定の基準で駄目となれば、すぐにその任をとき、責任者がバックアップできる状態にいることだ。
あとはお前に任せた。俺は知らない。というのは任せたとは言わない。
あくまでも責任者はその現場のリーダーなのだ。
このとき重要になってくるのは組織としての方針を、あらかじめ全員に明示して
共有しとくことが大事だという。
著書では、ある整備士の話が紹介されていた。
ボルトを規程の力で締めたか、自信が持てず、上司に報告したところ
上司は担当者が自信がないなら、飛行機は飛ばせないと判断し欠便にしたのです。
これは、ANAの方針は「安全第一。整備に不安があるなら運行してはならない」という規定があるからだ。
責任者は、ボルトの締め付けは担当者に任せたわけだが、その担当者が100%でないといっているなら、飛ばすのは危険と判断しました。
このとき責任者が、「俺は知らないよ。さぁどうする。」なんて言われた日には、ボルト作業を任せられた人も困りますね。
搭乗手続きを開始して、乗客が搭乗している飛行機を欠便にするのって、私達が想像している以上に大変なできごとです。
これが「安全第一。整備に不安があるなら運行してはならない」ことを共有されていなかったら
もしかしたら、担当者は黙っていたかも知れません。
それでも担当者は怒られると思っていたが、責任者の人に「あえて良く言った」と褒めてくれたそうです。
確かにリーダーの考えがコロコロ変わる組織って落ち着いてないですよね。
皆さんのリーダーは、昨日と今日で言っていること変ったりしてませんよね(大笑
もう亡くなってしまったが、十八代目 中村 勘三郎さんがテレビのインタビューで
「型破りというのは、型にハマってこそ、破れるのであって、型(基本)がない人は型破りできないです」と
おっしゃっていた。
その道を極めた人だから言えるのかも知れないが、何事も基本は大事だよというメッセージだ。
ANAの整備では
- 工具は絶対に床に置かない(ホコリ等つくから)
- 雨具を来て、機内に入らない(水滴は故障の原因)
など、超ベテランの人ほど、基本中の基本を徹底的に伝えるとのこと。
これは、故障や故障になる原因を少しでも持ち込まないという、基本姿勢なんですね。
皆さんにとっての仕事の超基本ってなんですか。
叱るとフォローはセットで考える
100%悪いのであれば叱ることは必要。
ただし
- 人前で叱らない。
- 叱ったら後は引きずらない。
- 叱った方から歩み寄る。
歩み寄るというのも、叱ったあとに、「さっきはごめんね」とお別解を使うのではない。
これでは何のために怒ったのか、わからなくなってしまうし、部下や後輩がさっきの何だったの?って混乱をまねく原因になります。
歩み寄るとは
「はい。これでこの件はおしまい。また明日から頑張ろう」と笑顔で終わると良いらしい。
あくまでも叱るのは、ケジメであって、それをいつまでもネチネチ言っていてはいけない。
いますよね。ネチネチ系の人って。
仕事は上司だけではなくお客様から教えていただくこともある。
あるキャビン・アテンダントが搭乗されているご夫婦に
「今日はご旅行でいらっしゃいますか」と笑顔で声をかけたところ
「娘が病気になって、これから東京の病院に行くとこです」と言われたらしい。
このキャビン・アテンダントに悪気はなかった。
どこか潜在的に、夫婦揃って搭乗しているのは楽しい旅行なんだろうと思い込みがあったのは事実だ。
冷静に考えれば、搭乗される全ての人が楽しい旅行とは限らないということを、お客様を通して教えてもらったのだ。
整備士の先輩は、後輩から言われたひと言に衝撃を受けた。
「なんで言われたことができないんだ」とヘルメットの上から後輩の頭をたたいた。
後輩は「先輩、わたしはそんな教え方されても、絶対に答えませんからね」と反論されたそうです。
先輩は、ハッとしました。頭を叩くという最悪の行為をしたにもかかわらず、
心の底では「自分は正しいことをしていると」思っていた自分に気づいたからです。
そうなんです。この先輩は過去に自分の先輩から同じように指導されていたんです。
だから後輩にも同じことをして良いんだと思ったんですね。
冷静に考えればおかしなことだと気づくはずです。
大企業だから出来るんだというお叱りもあるかも知れません。
規模の小さい会社では、人手が足りず、放任しないと仕事が回らないという現実はあります。
ただ、教え方として、答えを教えるのではなく、質問することにより、問題意識を持ってもらい、本人が納得して行動するということは、非常に大事だし規模にかかわらず出来る教え方だと思います。
自らの仕事も、なぜその仕事ををするのか、自分に問いただしてみよう。
部下や後輩の指導に悩まれている方にはオススメ一冊です。