著者の佐々木さんは経済情報に特化したニュース共有サービス、ニューズピックスの編集長だ。経済情報誌の編集長というお立場から、日本が今後どのようになっていくのか、過去、現在と比較をしながら、国家、経済、仕事、教育、リーダーと多岐に渡って解説されている。このキーワードの関連性は読んでいくと、なるほど、つながっているのかと感心させられた。佐々木さんはコメントで、今後を担っていく特に30代以下の人たちに向けた、働き方ガイドブックなってくれればいいと書いている。私は若干この世代よりも上だが、勉強になったので本をご紹介したい。
それでは早速ご紹介。
チャレンジ童貞な日本人
佐々木さんは、最近の日本人は「チャレンジ童貞」になっていると言っている。
自分が知らない世界に足を踏み入れるのは怖い。しかし未知のものを怖がりすぎてしまい、先に進もうとしないのは、まるで女性を知らないがゆえに、女性に現実離れしたイメージをもって先に進めない童貞男子と同じだと言っているのだ。
しかしチャレンジをしないで安泰の日が続くのは2020年まで。
そう、東京オリンピックの年までしか続かないと未来予想している。
その新しい時代には、新しい思想やシステム、人が必要になっていくだろうと考えている。
そこで活躍するのは、今の30代以下の人たちだ。
佐々木さんは、この2020年以降の時期を「日本近代の第3ステージ」通称「日本3.0」と名付けた。
なんで「日本3.0」なんだろう。
そこのところから紹介したいと思う。
書名「日本3.0」って結局なんなの
「日本3.0」が意味するとこは、日本の近代が3段階目に入るということ。
ちなみに
- 1段階目は、明治維新から戦後
つまり大政奉還後、天皇を中心とした中央集権型の国造りが「日本1.0」
- 2段階目は、戦後から2020年
敗戦後GHQに支配され、経済大国として成長してきた今が「日本2.0」
どうして「日本2.0」の終わりが2020年なのか
- 東京オリンピック
日本2.0を牽引してきた団塊の世代の人たちが引退し、こぞって言うのは、
「東京オリンピックだけは観たい」これだそうだ。
2020年東京オリンピックは、彼らの青春の引退式だと、佐々木さんは言っている。
- 天皇陛下の退位問題
若い人には天皇陛下、年号を気にしない人もいるが、
団塊の世代の人たちは
年号が変わる=新しい時代の始まり
なのだ。
この二つが重なることによって、
団塊の世代の人たちは気持ち的に一区切りつけると予想している。
新年お参りに行ったとき、お坊さんに言われた言葉を思い出した。
と教えてもらった。
何かキッカケがあると、区切りをつけようとするキモチは理解できる。
そんな中、団塊の世代の人たちが築きあげてきた日本2.0のシステムではもう対応できない時代が目の前に来ているのだ。事実対応しきれていない。
新しい時代には、新しい思想やシステム、人が必要になっていくのだ。
「日本3.0」は、30代がカギ
「日本3.0」は、30代がカギを握る。
佐々木さんは3つの理由で30代がカギになるとあげています。
- 30代は経験と無知のバランスが最適だから
- 今の30代はそれ以前の世代と価値観が違うから
- 年代的に数が多いから
30代は社会経験を10年程度積んで組織でも責任ある立場になっている。
しかし組織人として色に染まりきっていないので自由な発想ができる。
そして体力がある。
次に学生時代からインターネットや携帯電話を身近に感じていたので、新しいテクノロジーに対するアレルギーが少ない。
その前の世代はブランド品と呼ばれる商品に対して憧れや想いも強く、今の30代以下の年代とはブランド品への価値観もだいぶ違う。
つまり今40代後半の人たちは、最後の日本2.0の人たちなのだ。
これは受けてきた教育にも通じているところがある。
著書の中で引用されているが
松下幸之助さんも、変革と30代について次のように語っています。
って思っちゃったな。
日本3.0を実現させるには、自由な発想、新しい価値観、体力的にも充実している、
30代以下の人たちがカギになるのだ。
日本3.0と経済について
いまは世界第2位の経済大国を中国に譲り渡し、あと10年もすればインドにも抜かれ4位になることは想像できる未来だ。
佐々木さんは、今後、人口が減少する中で規模を追うには限界があり、量よりも質で勝負する時代と言っている。
これは誰もが思うところだろうが、質で勝負するためにはどうしたら良いのか。
その一つは、新しいサービスや産業を作ることだろう。
しかし、日本はブレークスルー型のイノベーションが得意ではない。
どちらかというと改善型のイノベーションの方が得意なのだ。
これでは、新しいサービスや産業は生まれてこない。
世界的にみても、ブレークスルー型のイノベーションが得意なのは大企業ではなく、スタートアップ企業だ。
しかし、日本ではスタートアップ企業を重視する傾向にない。他国に比べると軽視されているのだ。
佐々木さんは経営者のインタビューを通じて肌で実感されている。
そんな中、著書で一つの解決策を提言している。
攻めが甘いスタートアップ。守りが上手な大企業。
佐々木さんは日本ではスタートアップ企業が主流になる日は、なかなか来ないだろうと感じている。
理由は
- まずは大企業の守りのうまさ
- スタートアップのスピードとスケールが不十分
- テクノロジーに精通した経営者が少ない
日本の大企業の凄いところは、やはり圧倒的な力があること。資金力に人員。
これは良いサービスだ。商品だ。と思った瞬間に、全力で潰しにくる。
そしてスタートアップ企業のサービスを簡単に超えていく。
だからこそ、スタートアップ企業はスピードが命。でも国内はベンチャーキャピタルが
それほど発達していないので資金を得ることは難しく。結果スピードもスケールアップできず追いつかれてしまう。
もう一つは真似されない戦略。これはテクロジーで勝負するという方法であるが、今日本ではテクノロジーに精通したスタートアップの経営者が少ないのだそうだ。
実際にホンダやソニーなどの会社も創業者は技術者だった。
でも、これってよくよく考えてみると、国内で陣取り合戦していて、
気付いたら外国から責められて、
「あああ」
どうしようという歴史上の構図に似ているようにも感じますね。
じゃ、この打開策がないのか
レンタル社員制度
佐々木さんは、レンタル社員制度を提言されています。
良かれ、悪かれ大企業に人材が集まっている。ただ大企業は辞令一つで職務内容が変わったりするので、
必ずしも全員が付加価値の高い仕事を任せられているわけではない。
本当に優秀な人は付加価値の高い仕事をしているだろうが、そこそこの人はそうでない部署に飛ばされたりするのだ。
であるなら、社員をスタートアップ企業にレンタルし、大企業は人を提供する代わりに、新しい商品やサービスを提供してもらう。それでブレークスルー型のイノベーションを起こすことができれば、大企業も、スタートアップ企業も、敷いては日本も潤い、一石二鳥、三鳥だと言っている。
特に日本人は保守的なため、大企業をやめてスタートアップに移動するという人は少ない。
出向という形で身分保障をしてあげれば、大企業に埋もれた人材を活用することができるだろうという考えだ。
付加価値の低い仕事はAIやロボットに取られてしまう
佐々木さんは、職種自体はなくなるが、人の手を介さないといけない仕事も沢山あるので雇用(仕事)が激減するだろうということはないであろうと予測している。また日本は人口が減っていくのでむしろAIやロボットが労働を助けてくれるので良いことだろう。
著書にも、2015年に野村総合研究所が発表した
日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に ~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~
が掲載されている。
興味のある人はアクセスしてみてください。
これを見ると、どんどん定形型の職種はなくなっていくことがわかる。
そのためにもレンタル制度は良い試みだとおもうが、大企業は保守的な人も多く実現するには相当のリーダーシップが必要だ。
まとめ
新書サイズなのに400ページにわたる本である。要は分厚いのです。
このBlogでは、日本3.0と経済についての部分をフォーカスしましたが、実際には
- 日本3.0の始まり
- 日本3.0と国家
- 日本3.0と経済
- 日本3.0と仕事
- 日本3.0と教育
- 日本3.0とリーダー
と6章に分かれて、書かれています。
冒頭でも書きましたが、実はその一つ一つが全てつながっているので、全部読むとスット心に入ってきます。
是非とも手にとっていただき、読んでいただきたい本です。